第1回SILAS学会報告Report on the 1st Annual Conference of the Japan Society for STEAM Education
大見出し
カナダのSTEAM教育の現状Jessica Rand
主なセッションと成果本セッションでは、カナダの教育現場におけるK-13(幼稚園から13歳まで)を対象とした、学際的かつ包括的なSTEAM教育の具体的実践が報告されました。
セッション区分内容の要約主な成果・到達点実践報告(K-13)
発表者:Jessica
カナダの州教育課程に基づいた、キンダーガーデンから中等教育初期(13歳)までの系統的なSTEAMプロジェクトの紹介。
発達段階に応じた「遊びからプロトタイピングへ」のシームレスな移行モデルが提示された。地域社会との連携先住民の知恵(Traditional Knowledge)と最新科学を融合させた、カナダ独自の「Two-Eyed Seeing」アプローチの事例。科学技術を単なるツールではなく、「文化や環境への敬意」とともに学ぶ重要性が共有された。
インクルーシブ教育特別な支援が必要な児童や、多様な言語背景を持つ生徒が、デジタルツールを通じて自己表現を行うSTEAM活動の報告。STEAMが「言語の壁を超えたコミュニケーション手段」として、教室の包摂性を高める効果が確認された。評価とリフレクション最終成果物(プロダクト)だけでなく、失敗から学ぶ「反復プロセス」をいかにポートフォリオで評価するかという手法の提案。
「失敗を称賛する文化(Culture of Iteration)」が、児童のレジリエンスと創造的自信を育むことが実証された。

「揚力(Lift)」をテーマに実践報告岩槻若葉幼稚園(STEAMチーム)
本セッションでは、教員自らが未知の課題に挑む「ティーチャーズチャレンジ」の成果を、園児の活動にどのようにトランスレート(翻訳)し、保育現場に落とし込んだかという実践的な報告が行われました。
実践報告(幼稚園)
発表:岩槻若葉幼稚園 STEAMチーム
「揚力(Lift)」をテーマにした教員の探究プロセスと、それを応用した4歳児クラスでの保育実践の報告。 教員が「教える人」から「共に面白がる探究者」へと変容するプロセスが具体化された。
ティーチャーズチャレンジ
教員自身が飛行機や翼の原理を体験的に学び、仮説検証を繰り返したプロセス(試行錯誤)の共有。
教員の「わからなさ」に対する耐性が、子どもたちの自由な発想を支える土壌になることが示唆された。
保育現場への落とし込み 難しい物理用語を使わず、「どうして浮くのかな?」という問いから、ヨットに見立てた帆に、風があたる事による揚力で進む原理や身近な素材を使った遊びへの展開。
幼児期におけるSTEAM教育は、知識の習得ではなく「現象に対する驚きと発見」にあることが実証された。
実践を交えた検証
会場での実演を含む、子どもたちが実際に「揚力」を感じ、形を工夫した事例の紹介。
目に見えない「空気の力」を可視化・体感化する教材構成の工夫が、他園の参考モデルとして高く評価された。

食育と運動遊びにおけるSTEAM教育みずほ愛育会(FDTメンバー)
実践報告(認定こども園)
発表:みずほ愛育会(FDTメンバー)
【食育×STEAM】紙風船を用いたポップコーン作りの実演
内容: 紙風船の中にコーン(種)を入れ、電子レンジで加熱。紙風船が膨らむ物理的変化と、中でコーンが弾ける音や振動を観察する。
ねらい: 調理器具を使わない意外性のある手法を通じ、熱による膨張や物質の変化への興味を喚起する。
【運動遊び×STEAM】風の力を用いた陣取りゲーム(対抗戦)
内容: 大量に制作した小型の紙風船を「風の力(うちわ)」で操り、自陣・敵陣に分かれて競い合う。
実施形態: 岩槻若葉幼稚園 vs みずほ愛育会による対抗戦形式。
ねらい: 目に見えない「風」を力学的に捉え、戦略的に物体を動かす協同作業を体験する。
探究心の醸成(STEAM的視点)
「なぜ紙風船の中でポップコーンができるのか」「どうすれば風で遠くまで飛ばせるか」といった、科学的・数学的な思考を遊びの中で自然に引き出すことができた。
高揚感のある学習環境の創出
対抗戦というゲーム性を導入したことで、園の垣根を越えた一体感が生まれ、先生方の能動的な参加と深い没入感(エンゲージメント)を確認できた。
五感を通じた食への関心向上
単なる「食べる」だけでなく、音、振動、視覚的な変化を伴うプロセスを共有したことで、食に対する多角的な興味を促すことに成功した。
実践知の共有と交流
FDTメンバーによる具体的な実践提示により、STEAM教育を幼児教育の現場に落とし込む際の有効なモデルケースを提示できた。

